アパートのコンセントが足りない…追加設置のポイントと注意点

アパート暮らしで「あと1口コンセントがあれば」と思った経験はありませんか?リモートワークが増えたり、スマホやタブレットの充電器が必要だったり、今や一人暮らしでも電化製品は驚くほど増えています。特に築年数が経過した物件では、設計当時の想定を大きく超える電気機器の数が当たり前になっています。玄関近くにはWi-Fiルーター、キッチンには調理家電の数々、寝室にはスマホ充電器と加湿器…。タコ足配線で何とかしのいでいる入居者も少なくありません。こうしたコンセント不足は、ちょっとした不便さを超えて、入居者の満足度や安全面にも影響する問題です。適切な追加設置で解決できる場合も多いので、まずは現状を見直してみましょう。




追加設置で解決できること・できないこと

アパートのコンセント追加工事には、できることとできないことがはっきりあります。賃貸物件のオーナーや管理会社が知っておくべきポイントを整理しました。



既存回路からの分岐設置

もっとも一般的なのは、近くの既存コンセントから分岐させる方法です。壁の中の配線をたどり、新しいコンセントを増設します。費用を抑えられる反面、その回路の電気容量は増えないため、使用できる電気製品の総量は変わりません。エアコンやドライヤーなど消費電力の大きい機器を同時に使うと、ブレーカーが落ちる可能性は依然としてあります。



分電盤からの新規配線

より根本的な解決策は、アパートの分電盤から直接新しい回路を引く方法です。工事費用は高くなりますが、電気容量の制約を解消でき、大型家電の使用も可能になります。ただし、分電盤に空きブレーカーがない場合や、建物の構造上、新たな配線経路の確保が難しい場合は実施できないこともあります。



できないこと・注意点

築年数の古いアパートでは、建物全体の電気容量(契約アンペア数)に制限があるケースも。分電盤までの引き込み線の太さや容量が不足していると、コンセントを増やしても根本的な解決にならないことがあります。また、木造や鉄骨造など建物の構造によっては、壁内の配線工事が困難な場所もあります。こうした制約を事前に把握しておくことが、適切な提案につながります。




設置場所の選び方と美観の工夫

コンセントの追加は単なる機能改善だけでなく、部屋の使い勝手と見た目にも大きく影響します。入居者目線で考えた理想的な設置場所と、美観を損なわない工夫を紹介します。



家具配置を考慮した位置決め

入居者が家具をよく置く壁際や、デスクやテレビ台の裏側は、コンセント需要の高いエリアです。特にベッドサイドやソファ横、作業デスク周辺は充電機器の定位置になりやすく、コンセント増設の効果が高い場所です。また、リビングの四隅に最低1か所ずつあると、どんな家具配置にも対応しやすくなります。



目立たない配線ルートの選択

美観を保つためには、配線ルートの工夫が欠かせません。可能な限り壁の中を通す「隠ぺい配線」が理想ですが、構造上難しい場合は「モール配線」という樋状のカバーで保護する方法もあります。このモールは壁と同色に塗装したり、幅木や天井の廻り縁に沿わせたりすることで、目立ちにくくなります。また、コンセントカバーも白色だけでなく、壁紙に合わせたカラーバリエーションから選べるようになってきています。



今後のリフォームを見据えた設計

将来的なリフォームも視野に入れた設置計画も大切です。例えば、キッチンやバスルームの更新時に配線が邪魔にならない位置を選んだり、将来的に壁紙の張り替えがしやすいよう余裕を持った設置方法を採用したりできます。一時的な対応ではなく、物件の長期的な価値を高める視点で検討することをおすすめします。




費用の目安と見積もりのチェックポイント

アパートのコンセント追加工事は、工法や条件によって費用が大きく変わります。予算計画を立てる際の目安と、見積書を見る時のチェックポイントをご紹介します。



標準的な工事費用の相場

最もシンプルな「近くのコンセントからの分岐」であれば、1か所あたり1万5千円~2万5千円程度が相場です。これには配線材料費、コンセント本体、作業費が含まれます。一方、分電盤から新規に配線を引く場合は、距離や経路によりますが、1か所あたり3万円~5万円ほどかかることが一般的です。複数箇所をまとめて工事すれば、1か所あたりの単価は下がる傾向にあります。



追加費用が発生するケース

標準工事費に含まれない追加費用が発生するケースも少なくありません。例えば、以下のような条件では費用が増加します。


天井裏や床下への立ち入りが必要な場合

壁の構造が複雑で配線経路の確保が難しい場合

土日祝日や夜間の工事を希望する場合

高級グレードのコンセントカバーを選択する場合

壁の補修や塗装が広範囲に必要になる場合



見積書の比較ポイント

複数の業者から見積もりを取る際は、単に総額だけでなく、以下の点も比較するとよいでしょう。


材料の明細(配線の種類やメーカー、コンセントの規格など)

保証期間と保証内容

工事後の清掃や廃材処分の有無

緊急時や不具合発生時の対応体制


価格だけで判断せず、アフターフォローや使用部材の品質も重視することで、長期的に満足できる工事になります。




工事当日の流れと安全対策

コンセント追加工事が決まったら、当日の流れと事前準備について知っておきましょう。入居者への影響を最小限に抑え、安全に工事を完了させるポイントを解説します。



工事前の準備と立ち会い

工事当日は、作業場所の荷物や家具を移動しておく必要があります。入居者が居住中の場合は、事前に工事エリアの片付けを依頼しておきましょう。また、空室での工事であっても、管理会社や大家さんの立ち会いがあると安心です。特に建物の構造や既存設備について質問が出ることもあるため、詳しい方の同席が望ましいでしょう。



停電範囲と時間の目安

コンセント追加工事では、安全のためにその回路または部屋全体の電気を止める必要があります。標準的な工事では、1か所あたり1~2時間程度の停電が発生します。複数箇所の場合は、全体で半日程度を見込んでおくとよいでしょう。入居者がいる場合は、冷蔵庫など常時電源が必要な機器への影響も考慮し、可能であれば別回路からの仮設電源を用意する配慮も検討してください。



養生と安全確保の方法

業者は床や壁を保護するための養生を行いますが、特に貴重品や壊れやすいものは事前に移動しておくことをおすすめします。また、工事中は粉塵が発生することもあるため、必要に応じてエアコンのフィルター清掃や窓の開閉についても業者と打ち合わせておくとよいでしょう。施工後は、新設したコンセントだけでなく、工事に関係した周辺の電気設備も含めた動作確認を行います。



まとめ:長く快適に使うためのアフターケア

コンセント追加工事が完了しても、その後の管理や使い方が重要です。長期間トラブルなく使用し続けるための注意点と、入居者への伝え方をまとめました。


新設コンセントの使用開始後、1か月程度は定期的な確認をおすすめします。特に壁が熱くなっていないか、異音や異臭がないかなどの基本的なチェックが大切です。また、年に一度程度、接触不良や緩みがないか点検すると安心です。特に水回りや湿気の多い場所に設置したコンセントは、湿気による影響がないか注意が必要です。


入居者に対しては、新設コンセントの用途や注意点を明確に伝えましょう。例えば「このコンセントは照明・テレビ用」「こちらは冷蔵庫専用」など、用途を限定することで過負荷を防げます。また、取扱説明書や回路図を残しておくと、将来的なトラブル対応や設備更新時に役立ちます。


適切な維持管理と入居者への情報提供を通じて、コンセント追加工事の効果を最大限に引き出し、住環境の質を長期的に向上させることができるでしょう。電気設備の改善は、入居者の満足度向上と物件価値の維持につながる重要な投資なのです。